日本書紀編纂1300年記念
荒魂―佐々木誠の木彫展
令和2年(2020) 6月13日(土)-6月27日(土)
日・月曜休廊 正午―午後6時 最終日は5時まで 新作展示
日本木彫の系譜を今に受け継ぐ彫刻家、佐々木誠氏の仕事は、いつも祈りから始まります。それは願うというよりも、意宣り(いのり)たる意志の表明です。祓詞奏上が日課の私ですが、それは所謂宗教ではなく、日本の叡智の体現として。祓いは意宣りを確かなものとし、いわば画用紙を真の白にすることで、一本の線が引けます。
5年程前に、「烽(とぶひ)」という佐々木展を開催しました。フライヤーにはスサノヲ(素戔男尊)のことを書きました。日本で最初の和歌を詠んだ芸術神のスサノヲは、アマテラス(天照大神)の天岩屋戸籠りの原因をつくった荒ぶる神でもあります。世は常闇となり危機が襲いますが、此れにより神々は祭を行い、祭は神楽となり、神楽は能の起源ともなります。荒魂に拠る反転、画期、或いは危機を脱する力。スサノヲ的公憤からもたらされる剣(スサノヲが退治したヤマタノヲロチの尾から出現)は、アマテラスに奉じられ、ヤマトタケル(日本武尊)に伝わります。ヤマトタケルの歌は、連歌の起源となります(常陸筑波の歌を甲斐で詠みます)。剣は歌(詩・芸術・言霊)と共に在り、在り続けます。
疫病や富士山噴火などの天変地異が続いた貞観(じょうがん/1150年程前)の時代に、全国の祇園祭の起源たる御霊会があり、牛頭天王・スサノヲが祀られました。そして今般、佐々木氏が以前に縁あり、スサノヲ尊疫病除けと彫られたお札の版木を、ずっと神棚に祀っており、それを和紙に手づから刷ったものをおくっていただきました。文字通り有難いと思いました。佐々木氏とも相談し、お札をこの大判葉書の形(6/2投稿画像)にし、感謝と祈りを込め、皆様にお届けしたく思います。
今も日本の正史たる日本書紀は、今年、編纂1300年を迎えます。文明の大きな転換の時、最古の歴史を紡ぐ日本のいにしえの叡智が、新たなる文明を繋ぎます。彫刻家は時代の使命を負っています。荒魂とは、心新たの意を孕みます。
●佐々木誠 1964東京生まれ。1997彫刻創型展、文部大臣賞。2010「祖形ヒトガタ」個展、羽黒洞。2014「垂直ノ存在社」東千賀と二人展、「たまふり」個展、ギャルリさわらび。「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」(足利市立美術館、DIC川村記念美術館、北海道立函館美術館、山寺芭蕉記念館、渋谷区立松濤美術館)。2018「まつりのたましひ」展、常陸國総社宮。「木学/XYLOLOGY-起源と起点-」旧平櫛田中邸アトリエ。日本の風土、歴史、神話に自己の胚胎の原点を据え制作。
葉書裏面下 ≪夜久毛多都 やくもたつ≫(撮影:富野博則)楠 彩色 65x155x80cm
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やくもたついづもやへがきつまごみにやへがきつくるそのやへがきを(素戔男尊/和歌の起源)