旧銀座アパートメント/さわらび

 

銀座一丁目、柳通りを少し入る。
古いスクラッチタイルの外観。

昭和7年の建築。
長い歳月の間に廊下の土間コンが熟れ路地の趣を呈している。
不思議にずらされた二つの階段室。
手動のエレベーターには、時計形の階数表示と蛇腹式の扉。
「これは某事務所の設計になる銀座アパート。所在、設計者等は未だ発表を見合してゐて呉れとの事」とは、当時の文献の記述。
フランク・ロイド・ライトのアルバイト設計との説も伝わっている。
戦前期の住人には、詩人の西條八十、歌手の佐藤千夜子東京行進曲)、ジャズ評論の先駆野川香文、舞台美術家の吉田謙吉をはじめ、芸術家、文士、俳優など時代の風を浴びた多士済々がいる。

世は平成、
異空間に迷い込んだ人々が、何かを探しているかの如く階段を上り下りしている。

ギャルリさわらびは、小部屋が並ぶこのビル(現奥野ビル)の一室にあります。


いはばしる たるみのうへの さわらびの 萌えいづる春に なりにけるかも

早春の山野、清冽な水の迸りを受け、すくと萌え出るさわらび(早蕨)。
いかにも新しい生命の先駆。
躍動と色彩を感じさせる風情が、万葉集にも歌われています。

自然や文化の恵みを感受し、
人間が生き、成長していくとはどういうことなのか。
人間とは?
ギャルリさわらびは、
美術をとおして見つめ続けていきたいと思っています。

(平成15年8月29日廊主記)

 


手動式エレヴェーターの階数表示盤
手動式エレヴェーターの階数表示盤

 

 

 

 

 

 

 

『Hanako(2015.10.8 No.1096)』「銀座、再発見!」に、奥野ビルとギャルリさわらびが紹介されました

画像は、櫻井陽司「少年」(左)、佐々木誠「拆厳之霊(拆雷神)さくいかづち」(右)

sakurai yoshi

 

sasaki makoto

 

higashi chika

 

[不合理ゆえにわれ信ず]展